2022/07/17
本記事では、数m~十数mクラスの大型ワークの機械加工において使用される五面加工機(門型加工機)の特徴や、大型機械加工におけるポイントについて詳しく解説します。加工事例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
五面加工機(英:Five-sided Processing Machine)は、下面を除くワークの上面と4側面の計5面を段取り替え無しで(ワンチャックで)加工することができるNC工作機械です。プラント設備や船舶、航空機部品など数m~十数mクラスの大物・長尺のワークの機械加工に適しています。
その理由は、①”門”のような2つのコラムが主軸を支える構造になっているため主軸の剛性が高く、大型金属ワークの重切削が得意、②加工テーブルが大きく通常のマシニングセンタのテーブルに載せられないワークでも加工できる、という2つがあります。
主軸の剛性が高いため、工具の突き出し長さを長くする必要がある場合も、”びびり”が起こりにくいという特徴があります。このことは、大型ワークを高精度に加工するうえで非常に重要です。
五面加工機は、その構造から門型加工機または門型マシニングセンタと呼ばれることも多いです。価格は、数千万円から、多機能かつ高性能の機種であれば1~2億円する場合もあります。
なお、五面加工機と通常の横型・立型マシニングセンタとの違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>門型マシニングセンタとは?立型・横型マシニングセンタとの違い
五面加工機(門型マシニングセンタ)の加工動画もありますので、ぜひご覧ください。
五面加工機には、3つの駆動方式があります。
最も基本的な駆動方式です。主軸が上下・左右に動き、加工テーブルが前後方向に駆動します。
五面加工機の主軸は、厳密に言うとコラムのクロスレールという部分に取り付けられています。主軸の駆動に加えてクロスレールも上下方向に動くのが、クロスレール移動式です。
ガントリー式は、加工テーブルだけでなくコラムも駆動する方式です。普通、加工テーブルの駆動距離を考慮すると20~30mのスペースが必要になります。「五面加工機は必要だが充分なスペースが確保できない」という場合に向いています。
五面加工機とよく間違われる工作機械として、五軸加工機があります。
両者の違いは何でしょうか。
五軸加工機(英:Five-axis Machine)とは、通常XYZの直線3軸で主軸が駆動するマシニングセンタに、加工テーブルが動く機能が付加された工作機械です。直線3軸とテーブルの回転軸・傾斜軸の2軸を合わせて計5軸となります。
五軸加工機のメリットは、①複雑形状の加工が得意②リードタイムを短縮できる③高品質な加工が可能という3つがあります。
アンダーカットがある乃至側面の穴加工などが必要な複雑形状部品を3軸のマシニングセンタで加工する場合は、加工中にワークを治具から取り外し付け替える段取り替えの時間が発生します。1点物であればあまり問題にはなりませんが、数量が多くなればなるほどリードタイムに大きな影響を及ぼします。また、治具から取り外すたびにワークは劣化してしまうので、高精度・高品質を出すのが難しくなります。
しかし、加工テーブルが動く五軸加工機であれば、アンダーカットや側面の加工も問題無く可能です。さらに、少ないチャック回数で加工できるため、製造リードタイムの短縮とそれによるコストダウンの実現、そして製品品質も担保することが可能です。
五面加工機・五軸加工機の大きな違いは、加工テーブルの駆動方向とサイズ・形状です。
五軸加工機の加工テーブルが、テーブルに対して垂直な軸を中心に回転する、且つテーブルに対して水平な軸を中心に回転する(傾斜する)ため、側面の穴加工も可能であるのに対し、五面加工機のテーブルは前後方向にしか動きません。これによる問題点については、後述します。
また、五軸加工機の加工テーブルサイズは数百mm~2,000mm程度(径または一辺の長さ)が主流ですが、五面加工機のテーブルは長手方向に数千mm~10,000mm程度という細長い形状をしています。
なお、両者の性能を併せ持った五軸/五面加工機もあります。
五面加工機の加工テーブルは前後方向に、そして主軸は左右・上下方向にそれぞれ駆動します。
前章で五軸加工機と比較してご説明したのでお気づきの方も多いかと思いますが、五面加工機は”そのままでは側面や斜め方向の加工ができない”という構造的な問題があります。
では、大型ワークに前述のような加工を施すためにはどうすればよいのでしょうか。
ズバリ、異なる加工ヘッドを備えたアタッチメントを主軸に取り付けるのです。ここに、大型精密機械加工のポイントがあります。
五面加工機の主軸に取り付ける加工ヘッド(アタッチメント)には様々な種類があります。通常、五面加工機のアタッチメントは、AAC(自動アタッチメント交換装置)により加工中に自動で交換されます。
スナウトは、テーブルに対して垂直に取り付ける、最も汎用性の高い加工ヘッドです。上面の穴加工やエンドミルを使用した溝加工を行います。
30°ヘッドは、文字通り、主軸に対して30°に傾いている加工ヘッドです。斜め方向の穴加工や金型の加工に向いています。
アンギュラヘッド(アングルヘッド)は、側面加工用の加工ヘッドです。主軸に対して直角に工具を取り付けることができるため、側面の穴加工が可能です。
ユニバーサルヘッドは、工具を自由自在に動かすことができるため、曲面の加工に適しています。
5面加工ヘッドは、一つのアタッチメントで上面も側面も加工できる優れた加工ヘッドです。加工スピードが速いのが特徴です。
製缶加工・装置受託センター. comでは、こちらの門型マシニングセンタMVR-40(旧三菱重工工作機械 製)を用いて、水門設備、産業機器、鋼構造物等の大型ワークの精密機械加工を行っています。
メーカー指定の加工能力は幅3,500mm×長さ8,000mm×高さ2,200mmですが、レベル・トランシットを使用して3次元計測を行いながら長さ13mの長尺品を加工した実績があります。
過去には、特殊形状のためNC長尺旋盤で加工できなかったロープシーブを五面加工機で加工したこともあります。
>>【提案事例】旋盤加工では困難なロープシーブを、門型マシニングセンタを工夫して加工を実現
さらに、当社は20tクレーンも保有しているため、重量物の加工も問題無く可能です。
こちらは、五面加工機の加工動画です。ぜひご覧ください。
当社が五面加工機を使用して加工を行った製品の事例をご紹介します。
画像をクリックして気になる事例をご覧ください!
十数mの長尺品や数mクラスの大型架台/フレーム、ワイヤードラム、自動搬送機などの大型精密機械加工なら、製缶加工・装置受託センター.comを運営する株式会社ヤマウラにお任せください。
本記事では、横中ぐりフライス盤とマシニングセンタの違い、そして両者のメリット・デメリットについて、加工動画と併せて詳しく解説しています。
2021/09/21
「高品質」「顧客満足度の向上」をモットーとして、さまざまなサービスを展開しています。